前ページで、館野の最近30年間の温暖化の季節による違いを確認しました。5月と7月の気温上昇が大きくなっています。(図1)
1989-1993→2015-2019の間の各月の平均気温の変化を棒グラフにして確認すると図2のようになります。5月、7月に次いで10月、8月の気温上昇が大きくなっています。また、1月はほとんど気温が変化していないことがわかります。
温暖化の季節による違いの原因は何でしょうか。まず温室効果ガスである二酸化炭素濃度を確認しましょう。気象庁による二酸化炭素濃度観測は、綾里(岩手県大船渡市) 南鳥島、与那国島の3カ所で行われています。館野に最も近い綾里の二酸化炭素濃度を図3に示します。
1989-1993から2015-2019にかけて年平均二酸化炭素濃度は51ppm上昇していますが、夏季は二酸化炭素濃度が低下しており5月、7月の気温上昇は説明できません。(夏季は植物の光合成が活発化するため二酸化炭素濃度が低下します。)
念のため各月の二酸化炭素濃度の変化(図4)を見ても5月、7月の気温上昇は説明できません。
もう一つの温室効果ガスである水蒸気(絶対湿度)を確認しましょう。(図5)
各月の絶対湿度の変化を図6に示します。7月、8月、5月の変化が大きく、気温の変化に似ています。但し、5月に最も気温変化が大きいことは説明できません。
ここでいったん温室効果を振り返って考えてみます。温室効果は地表から放射された赤外線が温室効果ガスにより下向きに再放射されることによって起きますが、最初に地表を温めているのは太陽光のエネルギーです。
太陽光が地表を温めているエネルギーは全天日射量として観測されています。館野のデータを図7に示します。
各月の全天日射量の変化を図8に示します。5月の変化が最も大きく、絶対湿度の変化と組み合わせると5月と7月に気温の変化が大きいことが説明できそうです。
全天日射量の変化は「太陽光からのエネルギー供給量の変化」を、絶対湿度の変化は「地表付近の大気がエネルギーを受け取る能力の変化」を意味します。この2つを合わせたものは気温の変化と比例関係を持つはずです。y軸をA、x軸をBとしてグラフを描いてみます。
Bの中にある「任意の係数」については、「絶対湿度」を「地表付近の大気がエネルギーを受け取る能力」として数値化するにあたり何らかの係数が必要なものだと思ってください。
月平均気温の変化(A)と、全天日射量の変化と絶対湿度の変化を足し合わせたもの(B)の相関を図9に示します。前項で触れたBの係数を1.9とした時、=0.86の相関が得られました。館野の最近30年間の温暖化が、全天日射量の変化と絶対湿度の変化で概ね説明できることになります。
次のページでは調べる範囲を日本全体に広げてみましょう。