地球温暖化(6)

1. 温室効果のメカニズム

温室効果ガスによる温室効果のメカニズムを図1に示します。(1) 地表から温度に応じた赤外線が放出されます。(2)赤外線は天頂に向かいます。(3)温室効果ガスがあると赤外線を吸収します。(4)赤外線を吸収して高エネルギー状態になった温室効果ガスはやがて赤外線を放出し元の状態に戻ります。この時赤外線はさまざまな方向に放出されます。(5)さまざまな方向に放出された赤外線のうち、下向きのものは大気を温め温室効果が発生します。

2. 大気中の温室効果ガス

大気の主要な成分は、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素と水蒸気です。このうち温室効果を持つのは二酸化炭素と水蒸気です。大気中に水蒸気は質量で二酸化炭素の4倍、分子数で10倍程度存在するため両方の温室効果を見る必要があります。

3. 地表からの赤外線放射と温室効果ガスによる吸収

地表からの赤外線放射、二酸化炭素と水蒸気が吸収する赤外線を図2に示します。左側のグラフが地表からの赤外線放射です。地表の温度により赤外線のエネルギー(分光放射輝度)の波長分布が変化します。グラフには 323K(〜50℃、熱い砂漠)、303K(〜30℃、真夏日)、288K(〜15℃、現在の地球表面の平均気温)、255K(〜-18℃、温暖化ガスが無い場合の地球表面の平均気温)、233K(〜-40℃、高度9000〜10000mくらいの気温)の5本の線を描きました。右側の図は、二酸化炭素と水蒸気がそれぞれ吸収する赤外線の波長です。着色した部分の波長で赤外線を吸収します。

4. 高度による温室効果ガス量の変化 館野(つくば市)

二酸化炭素が大気中に均質に存在しているのに比べて、水蒸気は場所、高度により大きく存在量が異なります。ここでは、北半球中緯度の温帯地域(つくば市館野、北緯36度)の事例を見ます。地表付近では水蒸気が二酸化炭素より多く、質量で10倍、分子数で20倍以上になります。このため地表付近での温室効果の大部分は水蒸気によるものと考えられます。いっぽう、高度が高くなるにつれて水蒸気の量は減少します。高度9000〜10000mでの温室効果の大部分は二酸化炭素によるものと考えられます。

5. 1989-1993 と 2015-2019 の午前9時の気温 館野(つくば市)

温室効果ガスの分布が図3のような状態のとき、実際に気温がどう変化したかを見ましょう。図4は図3と同じく館野(つくば市)の午前9時の高層気象観測データから1989-1993の5年間の平均気温と2015-2019の5年間の平均気温を比べたものです。表示を最大限に拡大してもらうと地表(高度27.4m)での温暖化を確認できます。

高層気象観測データの引用元はこちら

6. 1989-1993 と 2015-2019 の午前9時の気温差 館野(つくば市)

図5は、図4のグラフの気温差を描いたものです。地表近くをよく見るため高度の軸を対数表示にしました。温室効果はまず地表付近で見られ、主に水蒸気によるものと考えられます。9000〜10000m付近にもう一つの温室効果のピークがあり、これは主に二酸化炭素によるものと考えられます。ここまでの温室効果で大気がより良く保温されるため12000m以上の高度では逆に寒冷化しているのがわかります。次のページでは場所や季節による温室効果の違いを見たいと思います。