前のページで1月、2月の気温が低下している様子を確認した15地点(気象庁が年平均気温経年変化を観測している15地点)について、最近30年間の5月、7月の気温が上昇している様子を確認します。(図1)
図2は1898-1992、1989-1993、2015-2019の月毎の平均気温をプロットしたものです。1898-1992から1989-1993にかけては夏よりも冬のほうが温暖化が進んでいるのがわかります。これが二酸化炭素の温室効果による温まり方だと思います。
1989-1993から2015-2019までは1月、2月の気温低下と5月、7月の顕著な気温上昇が同時に起きており、二酸化炭素の温室効果とは別の効果が働いていると考えられます。このページでは5月、7月の気温上昇について調べます。
地球温暖化(8),(9),(10) のページで、月平均気温の変化が、全天日射量の変化と絶対湿度の変化を足し合わせたものに相関を持つことを見てきました。図4は各月の全天日射量の変化を縦軸に絶対湿度の変化を横軸にプロットしたものです。
5月は1年のうちで全天日射量の増加が最も大きく、7月は1年のうちで絶対湿度の増加が最も大きくなっています。それぞれの気温上昇がどうなっているか調べます。
全天日射量:15地点中で観測が続いている7地点の平均
絶対湿度:15地点の平均
図4は、15地点の5月の平均気温の3時間毎の変化を1989-1993と2015-2019で比較したものです。タップすると1989-1993と2015-2019の気温差を確認できます。全天日射量の増加が大きい5月の気温は、昼間の気温上昇が大きいことがわかります。
図5は、15地点の7月の平均気温の3時間毎の変化を1989-1993と2015-2019で比較したものです。タップすると1989-1993と2015-2019の気温差を確認できます。5月と比べて7月の気温上昇のピークは朝方の6時にシフトしていることがわかります。
7月は1年のうちで絶対湿度の増加が最も大きくなっていました。図6は、15地点の7月の絶対湿度の3時間毎の変化を1989-1993(1990-1993)と2015-2019で比較したものです。1989年のデータが6時間毎だったため、1990-1993の平均を併記しています。タップすると1989-1993(1990-1993)と2015-2019の気温差を確認できます。
絶対湿度の増加は夜間のほうが大きくなっています。これと昼間の全天日射量増加が組み合わさって、7月の気温上昇のピークは朝方にシフトしていると考えられます。
当サイトの推測ですが、冬(1月、2月)は、概ね夜間の放射冷却により寒冷化し、夏(5月、7月)は概ね全天日射量の増加により温暖化していると思います。
これらを同時に引き起こすことができるのは「大気がきれいになっている」ことだと思います。
具体的には、「最近の平穏な火山活動」と「人間活動によるSO2排出量削減」により「大気中の硫酸塩エアロゾルのヴェール」が薄まり、冬の寒さと夏の暑さがより強くなっていると思います。
地球温暖化(4)のページで見た全天日射量の推移の続きを調べました。1991から2018にかけて全天日射量(5年平均値)は9%増加しており、空気がきれいになっていることが推定されます。
全天日射量と人間活動によるSO2排出量の相関の続きも調べました。「人間活動によるSO2排出量削減」が全天日射量の増加につながっていると思います。そしてこの相関が続く背景としては「最近の平穏な火山活動」があると思います。
10km3を超える噴出物を出すVEI 6以上の火山噴火が1991年のピナトゥボ山噴火以来起きていない。図7参照。
VEI : Volcanic Explosivity Index 火山爆発指数