最近30年間で1月、2月の気温が低下している様子を確認するにあたり、それ以前の様子と比較するため過去100年以上の気温を確認することができる15地点(気象庁が年平均気温経年変化を観測している15地点)を対象に調べます。(図1)
図1に示した15地点の過去100年あまりの月毎の気温の変化を図2に示します。1898-1992から2015-2019までのそれぞれの5年間の月平均気温をグラフにしています。
図3は図2から1898-1992、1989-1993、2015-2019のグラフを取り出したものです。1898-1992から1989-1993にかけては夏よりも冬のほうが温暖化が進んでいるのがわかります。これが二酸化炭素の温室効果による温まり方だと思います。
1989-1993から2015-2019までは1月、2月の気温低下と5月、7月の気温上昇が同時に起きており、二酸化炭素の温室効果とは別の効果が働いていると考えられます。このページでは1月、2月の気温低下について調べます。
図4は、15地点の1月の平均気温の3時間毎の変化を1989-1993と2015-2019で比較したものです。タップすると1989-1993と2015-2019の気温差を確認できます。昼間よりも夜間の気温低下が大きくなっています。冬の夜間の気温低下でまず考えられるのは放射冷却です。
図5は、15地点の2月の平均気温の3時間毎の変化を1989-1993と2015-2019で比較したものです。タップすると1989-1993と2015-2019の気温差を確認できます。2月も1月と同様に夜間の放射冷却が大きくなっていると考えられます。
放射冷却は地表の熱(赤外線)が宇宙に放射されることにより発生します。最近30年間の間に1月、2月の絶対湿度が小さくなっているため地表から放射される熱(赤外線)が地表近くの水蒸気で吸収される量が減り、宇宙への放射が大きくなっていると考えられます。
最近30年間の間に全天日射量は約9%大きくなっており、大気の濁り(大気混濁係数)が小さくなっていることがわかっています。地表から放射される赤外線への影響は可視光の1/100程度と考えられますが、散乱が抑えられ宇宙への熱(赤外線)放射が大きくなっていると考えられます。
https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/aerosolhp/aerosol_shindan.htmlこれまで見てきた1月、2月の最近30年の変化をまとめました。全天日射量と二酸化炭素濃度は増加、絶対湿度と大気混濁係数は低下しています。
絶対湿度と大気混濁係数の低下による夜間の放射冷却の増加が全天日射量増加と二酸化炭素の温室効果の増加を上回り、気温は低下していると考えられます。
次のページでは、1月、2月の気温低下と5月、7月の気温上昇が同時に発生する様子を調べます。